マルタ国際現代アート・スペース(MICAS)は、現代アートに特化した拠点創出により、マルタの文化的エコシステムの成長を目指す独立行政法人である。厳密な意味でのミュージアムでもなく、展示空間だけでもないMICASは、国際的な現代アートの世界で率先的役割を果たすことを希求し、アーティスト・イン・レジデンス、展覧会、シンポジウム、養成講座など広範な活動を推し進めるとともに、現代の芸術文化産業における共同体の拠点となろうとしている。
この動きの特筆すべき状況として、MICASが、フロリアーナ市——17世紀にヴァッレッタの西端に建てられた地区——を対象とする大規模再開発計画の一環として構想・実現されたこと、またEUの拠出金を得たマルタ政府の出資により、フロリアーナ要塞線の一部の修復が行われたことが挙げられる。この要塞線は、城塞都市ヴァッレッタの陸側の前線を守るため、聖ヨハネ騎士団の要望で、マチェラータ出身の軍事技師ピエトロ・パオロ・フロリアーニの設計に基づき1636年から建設された稜堡システムである。修復プロジェクトの開始と前後して、2016年にMICAS新拠点の国際設計競技の公募が決定し、カルロ・テルポリッリが主宰するフィレンツェの建築家集団、イポストゥディオが勝利した。これ以降、2つのチーム——歴史建造物修復局とイタリア人建築家たち——は、MICASの設計を機に計画完遂まで協力して働くことになる。2024年10月に、ポルトガル人アーティストのジョアナ・ヴァスコンセロス展とともにオープンした。
